弘法大師像 一幅 絹本著色 江戸時代 弘法大師の画像として現存する最古の遺品は、十世紀の中頃醍醐寺 五十塔に初層の腰羽目板に真言八祖の一として描かれたものである。 椅子上に座る形式のものは真如親王筆の伝統を示し、本来単独像と して描かれたものとみられる。 右手に五鈷杵、左手に数珠を持ち、やや左手を向いて座る姿勢は、 大師の画像に固有の形式で、この種の画像は広く真言宗寺院に流布し ている。 大師は密教とともに各種の医学知識をもち、相伝薬の陀羅尼助を もたらしたと、されている。奇妙な名前のダラニスケは、苦味をもつ薬 なので、僧侶が陀羅尼経を誦ずるとき、ロに含んで眠気を催すのを防いだ ところから、陀羅尼経を誦ずるのを助ける意だとも、また陀羅尼経の 不思議な霊力で人間を助けるので、その名がある、とされる。 また大師は水銀を用いて土砂加持秘法を宗教拡張に応用したとされている。 片桐棲龍堂 漢方資料館 |