猪苓 豚の大好物がおしっこを出す 猪苓はサルノコシカケ科チョレイマイタケの菌核でハンノキ、カエデ、クヌギなどの根に寄生し、地下にかたまって 生長します。中国だけでなく、日本、ヨーロッパ、北アメリカでもとれます。一番とれるのは中国の雲南省ですが、 品質は陜西省のものが一番いいとされています。 雨が続いた後には地上に顔を出してキノコがはえます。キノコも地下の菌核も猪(中国では豚のこと)が よく食べ、野猪食という、おもしろい呼び方があります。 『神農本草経』では「中品」とされ、「味は甘く、作用はおだやかで、からだの水の流れをよくして、不要な 水分をとる」と書かれています。 『本草綱目』には「猪苓の味は淡く、作用は水分をにじみだし、気を上げることも下げることもできる。毛穴 を開き、小便をだす効用は茯苓と同じだが、元気にさせる効用は茯苓より弱い」とあります。 猪苓の応用―猪苓湯と五苓散が有名 猪苓は、下腹部に熱をもち、水分がたまっておこる頻尿、尿意が早まりがまんができない状態、排尿痛に、 または水分の代謝がよくないためにおこる小便が出にくい、むくみ、腹水に、さらには水分がたまって、 気分がすぐれない状態によるめまい、頭重に便いわけています。煎じ薬だけでなく、中成薬として丸剤、 エキス剤などがあります。 猪苓と茯苓を含む、有名な漢方薬としては猪苓湯があります。からだの水分代謝が悪く、局部に水が たまると、熱がこもり、全身の潤いが不足した状態(陰虚湿熱)となります。それによって小便が出にくい、 むくみ、発熱、口の渇き、腹痛などの症状がある場合、猪苓湯を便います。 もう1つが五苓散です。 こちらも、よく似た働きを示しますが、からだを温めて気をめぐらす働きがあり、小便が出にくい、痛みや微熱、 気分がもやもやしてすぐれない、口の渇き、動悸、めまい、咳、息切れ、むくみ、下痢などに使っています。 薬理研究では、小便を出して、むくみをとる作用が認められています。まだ、ラットに膀胱がんの発がん物質 とともに猪苓の粉をえさに加えると、がんの発症率が100%から60%まで低くなり、そのがんの体積も小さく なりました。 |