「猫鼠道化合戦の図」

                一栄斎・芳艶画江戸時代後期


三井寺の仏典を食い荒らして法力を会得した阿者梨鼠と猫の戦いの錦絵である。錦絵の左画面に「ねずみとりの薬」の旗印を猫が掲げているので、殺鼠薬の石見銀山の広告の引き札かもしれない。猫や鼠の名が面白く、楽しんでご覧下さい。

武器としては鼠軍が「またたび」の薬袋を撒いて猫軍の士気を撹乱しているし、猫軍は大きな「あわび貝」を抱いて鼠軍を威嚇している。夜、貝の表面がキラキラと光って、鼠が嫌う性質を応用したものである。

鼠を退治することで衛生環境を良くして、疾病の予防を呼びかける滑稽画である。江戸時代はこのような錦絵が数多く描かれ、衛生思想の普及に貢献した。近年、ドイツからの里帰り品である。
         片桐棲龍堂漢方資料館(大阪・堺市)蔵品


資料は、松浦薬業株式会社(松浦 敬一社長)発行の“伝統と医療”の表紙に掲載された写真と解説を使用させていただいています。(解説は片桐平智の
執筆したものです。)