はしか絵 「麻疹禁忌」 一鵬斎芳藤画文久2年6月 江戸時代、疱瘡と麻疹は、それぞれ見目定め、命定めとして庶民がもっとも恐れた病気であった。「はしか絵」は麻疹よけの呪として、壁や屏風に貼られた。また、はしかは一度かかれば終生麻疹から免れることから、軽くすませられるよう養生法を教えるものでもあった。「はしか絵」のほとんどが文久二年の麻疹大流行の時に版行されている。 唐の開元年中、終南山の進士・鍾馗が病中の玄宗皇帝の夢の中に現れ、魔を払い病を癒したという故事から防疫神となったのに題をとって画面左に錘馗を配し、中央に薬祖神の神農像の掛軸の絵を配し、病に対する万全の処置を示している。強力な武神の力を借りて疫病を重複追放することを願う庶民の心情が窺われる。 麻疹の疫病神がスサノオノミコトを主とする庶民に追いつめられて縛られている風刺画である。背中に赤い発疹が出ているのがおもしろく描かれている。 最近富山の民家の壁の下張りから発見されたもの。 片桐棲龍堂 漢方資料館所蔵 資料は、松浦薬業株式会社(松浦 敬一社長)発行の“伝統と医療”の表紙に掲載された写真と解説を使用させていただいています。(解説は片桐平智の 執筆したものです。) |