東錦 倭風俗 諸侯方御誕生式

江戸時代、大名家の奥方の産後の情景が描かれている。奥座敷には日本独自の産婦人科医学に基づいて、立つてお産をした奥方が見受けられ、額には魔除けと解熱の意味で紫草染めの鉢巻きをしている。また、奥女中が産後の煎じ薬を下げて退出している。片桐家では各種の安胎薬剤を使用しており、この錦絵は産後の養生の説明に利用している。

画面上には輪番の御典医師が集団合議制度で様々な産後薬や小児薬を調合している様子が丁寧に描かれている。新生児は胎毒下ろしを投与されるために、現代の様に皮膚炎を生じることが殆ど無かった。江戸時代のお産と薬の関係を示す興味ある錦絵である。


資料は、松浦薬業株式会社(松浦 敬一社長)発行の“伝統と医療”の表紙に掲載された写真と解説を使用させていただいています。(解説は片桐平智の
執筆したものです。)