伝統漢方専門老舗
牛黄は、牛の胆嚢管中に稀に発見される「結石」を乾燥させたもので、古来より命を養う薬、即ち「上薬」に類別されています。 片桐家では以前より御緑があって、近年奈良の東大寺様の「お水取行法」として有名な、二月堂の修二曾行法用として、牛黄を毎年寄進させていただいております。そういう関係で東大寺様より御下賜の品を展示いたしました。 以下、東大寺様の修二曾における牛黄に関する所作を日を追って説明します。 2月27日にはニ月堂観音の御守の牛玉と尊勝陀羅尼経を擦る用紙が配布され、これを古式に則り丁寧に折り、牛玉箱に納めて、頭上高くなげしに懸けます。 翌28日には籠られる練行衆の各自の所持品である牛玉櫃に自己の定紋を添付します。二月の晦日には牛玉箱と牛玉櫃を香薫といって燻じ清めます。 牛玉箱は3月1日、上堂すると同時に内陣のなげしに懸けられ、日に何回となく礼拝されます。 3月の8、9、10日の.三日間、日没後の練行衆の勤行の後、30分間ばかり、御香水と牛玉墨とによる墨汁で―枚ずつ誦しつつ御牘は擦り上げられて、満行にいたるまで牛玉箱に収納され、祈念されます。この数日を「牛玉の日」と称しています。 番僧や納所が内職に作る御牘とは全然その趣を異にしていて、言い知れぬ有り難味があり正しい信仰が起こってきます。東大寺様の寶庫には空海が版下を書いたと伝えられる牛玉およぴ陀羅尼の版木が保存されています。 3月12日の後夜に使用する長い柳の枝も牛黄の霊力に因み牛玉杖と呼ばれています。3月15日の晨朝の勤行の後牛玉箱は童子をして持ち下らしめます。 満行の後、堂司より練行衆は咒師から、牛玉に捺す朱印で除病與楽の意味の朱寳を額に捺してもらいます。この曾の間に作成された御牘の「二月堂牛玉」や御供えの御餅の「二月堂壇供」は宮中にも献上されています。 手前に展示してあります椿の紙の造花は十―面観音様に献花され、実際に使用されたもので松明の煤も生々しく感じられます。 当堂が恙く営業でき御客様の快気も東大寺様の御陰と感謝しています。 本展示も東大寺様の御協力の賜物です。 |