伝統漢方専門老舗




       
   
     漢方の臨床第68巻第5号 (2021)



    官民を挙げて日本文化遺産の漢方医学を守って欲しい
                   片桐棲龍堂17世 片桐平智

創刊八〇〇号、 こころから御慶び申し上げます。
庭の利休遺愛の「斗々屋」椿の白き筒咲きの花や、当家唯一遺在の堺五色散り椿「南宗」が開花しはじめ、
鴨や目白が花芯を啄む冬には珍し、冬日和です。
隣接の薬草園からは梅や蝋梅の薫りが漂ってきています。
御誌には大学生時代から図書館で各種製薬会社発行の機関雑誌とともに多くの未知の知識を御教示いただきました。
心から感謝しています。

また東亜医学協会、日本東洋医学会会員に参加させていただいてからも、「目でみる漢方史料館」の愛読者で、
これは当家の漢方資料の歴代の整理、展示解説にも多大に活用させていただきました。
筆者の小曽戸洋先生も杏雨書屋への来阪、帰路当家に表敬訪問していただき、つたない展示物や資料など、
ご覧いただいたことも思い出です。

医薬関係、どちらにも片寄らずの編集で最新知識も豊富で店頭応用や解説にも役立っています。
近年は陰で編集企画に参画していました漢方の製薬会社機関雑誌が長く続いたのに、諸般の事情などで
相次いで廃刊し寂しく思っています。
御誌はどうぞ頑張って、末永く継続刊行してください。
御雑誌の広告掲載の各製薬会社はいずれも関わりがありますが、大昔大阪府衛生部を退職した時、
監視業務に携わる経験で会得したのは、製薬会社を減らしては薬の製造が遂行できず、
どんなに医学知識を有しても医薬品の提供がなければ医療行為も医薬品販売行為も不可能になります。

高校3年で医師の父を亡くし、家業を継ぐため薬剤師の道に進みました。
古い医学系統の家で当時は家伝薬の製薬会社を、母が管理薬剤師とともに薬種商の資格で家業を継続していました。
古い膨大な歴代軍陣医師の資料があり、心配されて当時のエーザイの内藤会長、田辺製薬の会長、
東京大学の医学部、 スミソニアン博物館などの方の御助言などのおかげで、一部を内藤くすり記念博物館に
50年以上寄託保存しています。

この伝世資料で家訓により無報酬で、 神心、雲清、清風湯、冠元顆粒など次世代に伝搬の各種医薬品の
製造承認、開発に関与、数多の医薬品の上市に関与しました、齢も70を過ぎました。
御誌を通じて官民挙げて日本の文化遺産である生薬製剤を遺してほしく、改めて御誌こそ、日本漢方の
最後の指標の「澪標」と期待しています。 ますますの健稿を祈念します。

今年は東大寺修二会も1270回です。当家の龍穴牛黄が献上され、皆様と国家の安寧を奏上されます。
いつも一緒の渡辺武先生も逝かれました。 小生の代で半世紀近く、貢献しています。
亡き矢数道明先生、長谷川弥先生、 難波恒雄先生、馬継興先生方からも励ましの御文いただいたこともありました。